小江戸どうぶつ病院

川越市役所近くの動物病院です

取扱いワクチン変更のお知らせ

皆さん、こんにちは。


2018年になってまだまだのんびりダラダラしていたい今日この頃ですが、皆さんはいかがお過ごしですか?
今日は、今年から病院での取扱いワクチン変更に伴い、普段当たり前のように接種していただいているワクチンについてお話しようと思います。

 

そもそもワクチンってなぁに?
ワクチンは伝染病を予防するための注射になります。簡単にいうと毒性を無くしたか、または毒性を弱めた病原体が含まれています。それを体内に注入すると、体が持つ抵抗力で抗体が作られます。この抗体によって、伝染病を予防、またはかかったとしても症状を軽くすることができます。伝染病にかかると命に関わることもあるので、ワクチンの接種は必要です。


現在、日本で接種されているワクチンには、法的に年1回の接種が定められている狂犬病ワクチンと、任意接種されている「犬ジステンパー」「犬伝染性肝炎」「犬アデノウイルスⅡ型感染症」「犬パルボウイルス感染症」「犬パラインフルエンザウイルス感染症」「犬レプトスピラ感染症」などを含む混合ワクチンがあります。

 

ワクチンは毎年接種が必要なの?
近年わんちゃんねこちゃんのワクチン接種に関して、『ワクチンは毎年接種しなくていい』という話題が持ち上がるようになってきました。
これまでワクチンを接種すると「次は1年後に接種してください。」と言われたり、お葉書で「ワクチン接種の時期です」という案内が届いたり、それをきっかけに動物病院へ行く飼い主様も多かったと思います。


しかし近年のワクチンは製品開発が進み、免疫持続期間が長い(通常は3年ほど)ワクチンの認可が増えたそうです。つまり、一度しっかりと接種して免疫をつければ免疫効果が3年以上続くことがあるということが分かってきたのです。


ここで飼い主の皆さんに知っておいていただきたいことがあります。
ワクチンの免疫効果が長くなった ≠ 毎年接種しなくていい
ということです。


すべてのわんちゃんがワクチンで同じように免疫が得られるわけではありません。それぞれの体にしっかりと免疫が備わっているかを確認しなければならないのです。
 ちなみに狂犬病ワクチンに関しては抗体の有無に関わらず、法律によって毎年の接種が義務付けられていますので、よほど特別な理由がない限りは接種しなければなりません。

 

抗体価検査ってなぁに?
免疫効果に関しては「いまどれだけ体に個々の病気に対する免疫力があるか」を抗体価検査という血液検査で調べることが出来ます。そして抗体価が十分にあれば追加接種の必要性がないという判断になります。なので、毎年必ずワクチンを打つのではなく、抗体価の検査をして免疫が持続している場合はワクチンを接種する必要はない、ということになります。


当院ではコアワクチンに関しては必ずしも毎年の接種は必要ないとお話ししておりますが、それは毎年の抗体価をチェックして免疫効果が持続していることを確認した子に関して言えることです。また、レプトスピラ症の予防を行っている(7種・8種混合ワクチンを接種している)子に関しては毎年の追加接種の必要があります。

 

コアワクチンとノンコアワクチンって?
近年制定された新しいワクチン接種のガイドラインは、個々のペットのワクチンの必要性を分析し、それぞれのワクチンの性質に基づいて、ワクチンを「コアワクチン(全ての動物への接種が推奨されるワクチン)」「ノンコアワクチン(病気への感染リスクの高い動物にのみ接種が推奨されるワクチン)」に分類しています。先ほど説明した抗体価の検査ができるのは、現在コアワクチンで予防することが出来るパルボウイルス・ジステンパーウイルス・アデノウイルスに関してです。不活化コアワクチン(日本では狂犬病ワクチン)やノンコアワクチン(特に細菌抗原を含むワクチン)については一般的には当てはまらないことに注意しなくてはいけません。


コアワクチンに関しては免疫持続期間が3年のものが増えてきていますが、ノンコアワクチンに関しては免疫持続期間が1年未満のものが多くあります。そのため、ノンコアワクチンで防御する病気(パラインフルエンザウイルス症やレプトスピラ症)の感染リスクのある個体に関しては毎年のワクチン接種が必要となります。また、コアワクチンで防御する病気に関しても必ずしも全ての個体で免疫効果が3年続くわけではないため、それぞれの病原体の抗体価のチェックを行う必要があります。

 

抗体価検査とワクチンの副作用
ではなんでわざわざワクチン接種ではなく血液検査をしなくてはいけないのか、結局動物病院へ行かなくてはいけないのであればワクチン接種してしまった方がいいのではないか?という疑問も出てくると思います。


わんちゃんやねこちゃんのワクチネーションに関する重要な考え方の1つとして、「ワクチンに対する有害反応の可能性を最小限に抑える」というものがあります。つまり、ワクチンの副作用を起こさないためにワクチン接種の機会をなるべく減らすということです。ワクチンのアレルギー反応は発生する可能性がとても低いとはいえ、起こってしまうと最悪の場合死に至ることもあるものです。毎年同じワクチンでアレルギーを起こしていないなら大丈夫ということではなく、ワクチンを打つ度に毎回アレルギー反応を起こすリスクを負うことになります。病気を予防する為のワクチン接種が常にリスクを伴うのであれば、必要以上に行わないようにできないか?それが抗体価検査による免疫効果のチェックなのです。


さて、長々とお伝えしてまいりましたが、少しワクチンについて知って頂けましたでしょうか?


まとめると、
・ ワクチンの接種は病気の予防のために必要である
・ 抗体価がしっかり維持されていれば毎年のワクチン接種の必要はない
・ 抗体価を調べるには血液検査が必要である
・ 抗体価を調べてワクチン接種の頻度を減らせればアレルギー反応のリスクも減らせる
ということです。


コアワクチンで予防できる病気の抗体価については、毎年健康診断やフィラリアの予防開始時期に行う血液検査でも一緒に調べることが出来るので、ご興味のある方はぜひご相談ください。


 わんちゃんやねこちゃん達が少しでも長く健康に過ごすために、予防できる病気は予防し、防げるリスクは極力取り除いてあげる。そんなお手伝いを今年も頑張ってしていきたいと思っております。

 

WSABA(世界小動物獣医師会)のワクチネーションガイドラインの詳細については以下をご参照ください。
https://www.wsava.org/sites/default/files/WSAVA%20Vaccination%20Guidelines%20Japanese.pdf#search=%27WSABA+%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3%27 

 

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